耳垂裂
耳垂裂
耳垂裂とは、何らかの原因で耳垂(耳たぶ)が裂けてしまった状態をいいます。生まれつきの先天性耳垂裂と、重いピアスなどにより徐々に穴が広がって起こる裂傷や、ピアスなどで引きちぎられて起こる外傷性耳垂裂があります。先天性耳垂裂はまれですが、裂傷や外傷性の耳垂裂は頻繁にみられます。いずれも治療は手術で、裂けている皮膚の断面の一部を切除し、縫合によって正常な形に戻します。形成外科では、単純に縫合するのではなく、形成外科的な縫合技術を用いて、耳垂の形を丁寧に整えるため、より綺麗な仕上がりが期待できます。
ピアス穴の修正も可能です。局所麻酔を行ったうえで、ピアス穴の部分の皮膚を最小限切開し、形成外科の術式を用いて丁寧に縫合します。
以下のようなお悩みをお持ちの方は、ぜひ一度ご相談ください。
治療費について
先天性耳垂裂は保険適用となりますが、ピアスによる耳垂裂やピアス穴の修正は保険適用外での治療となります。
耳垂裂の原因として多くを占めるのがピアストラブルです。その内容には、以下のようなものがあります。
重いピアスを着用し続けていると、知らず知らずのうちにピアス穴が広がり、耳たぶを切れやすくしてしまいます。時間をかけて少しずつ穴は広がるため、その過程で痛みを感じることはほとんどありません。そのため、ある日突然ピアスが取れて耳垂裂に気付くというケースがとても多いです。
ピアスが何かに引っかかったことに気付かず、そこに急な強い力が加わることで起こる耳たぶの切れの外傷を、急性耳垂裂といいます。たとえば、毛足が長いセーターなどを脱ぐときに、ピアスが毛足に引っかかっていることに気付かず、そのまま引っ張って耳垂裂を起こすなどです。
ピアス穴が化膿した状態でピアスの着用を続けることはよくありません。痒みを生じ、かきむしることでピアス穴が広がり、耳垂裂や切れ耳が起こりやすくなります。化膿や痒みに気付いたら、一度ピアスの着用は控え、様子をみましょう。
金属アレルギーがあると皮膚炎が起こりやすくなります。皮膚炎は耳たぶを切れやすくする要因となり、耳垂裂の引き金となる可能性があります。コバルト、ニッケル、クロムなどが金属アレルギーの要因として多いようです。
ピアス穴が耳たぶの縁に近いところに開いていると、少しの力で耳たぶに切れが生じる恐れがあります。
耳たぶに普通以上の厚みがあり、ピアスの飾り部分やキャッチが耳たぶに食い込んでしまうことが多い方も、耳垂裂を起こしやすくなります。
耳たぶの切れや裂けがある部分は、皮膚で覆われると傷口がくっつかなくなってしまい、放置することで、切れのある部分にケロイドや瘢痕(はんこん)と呼ばれる傷あとが残ってしまいます。傷口の陥没、隆起、色素沈着などを起こしてしまう可能性も高くなります。
耳垂裂は放っておいて自然に治ることはなく、切れた部分の一部を切除して縫い合わせる必要があります。皮膚に覆われた部分が広くなれば皮膚切除の量も増え、綺麗に治せなくなってしまうこともあります。また、治らないばかりか、放置したために引き起こされる細菌感染のリスクも軽視できません。細菌に感染すると、赤く腫れたり痛みを伴ったりすることもあるため注意が必要です。
耳たぶが裂けてしまったら、少しでも症状が軽いうちにご相談ください。
耳垂裂の手術では、瘢痕化している裂傷部を切除してから縫合します。このとき、瘢痕だけをそのまま切除してしまうと、耳たぶにくぼみやくびれ、ひきつれ(瘢痕拘縮)などを起こすことがあります。当院では、こうしたことが生じにくい「Z形成術」または「W形成術」などを用いて、瘢痕を切除・縫合し、傷あとが目立ちにくく、自然な耳たぶの形になる手術を行っています。また、状態に合わせて皮弁形成術などを加え、より綺麗に治すことを心がけています。
自然な耳たぶの形に戻し、できるだけ傷あとを目立たなくする形成外科的な術式には、直線法、Z型形成術、W形成術があります。
直線法
裂けた線に沿って直線的に皮膚を切り取り、再び縫合する方法です。3つの術式の中で切除面積が最も小さく、耳たぶが小さくなりにくいため、左右差が出にくいという特長があります。
Z型形成術
耳垂裂の治療で最も多く用いられる術式です。線状の傷によって耳たぶにひきつれが起きている場合に多く用いられます。線状の傷の両側に切り込みを入れてZ形に縫合することで、ひきつれやくぼみ、くびれなどが解消できます。
W形成術
線状の傷の両側をW(もしくはV)の形に切開して、ジグザグになった傷の面を縫い合わせる方法です。直線法に比べて傷が目立ちにくく、耳たぶに歪みも生じないという最も仕上がりのよい術式です。
形成外科専門医が、患者様の耳垂裂の状態に合わせて治療方法(術式)をご提案します。術後の創部の経過や傷あとを目立ちにくくするポイントなどについても詳しく説明いたします。手術に関して気になる点や不安なことがあれば丁寧にお答えしますので、お気軽にご質問ください。
手術前に耳垂裂の状態をよく観察し、カウンセリングにてご納得いただいた術式で手術を行います。手術は局所麻酔で可能なため、日帰りの手術で受けていただけます。所要時間は最も多くみられるピアストラブルによる耳垂裂で、片耳30分から1時間程度です。
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耳たぶがぱっくりと裂けた手術前の状態です
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最も適した切開・縫合ラインをデザインし、ペンでマーキングします
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デザインに沿って皮膚を切開し、傷口とマーキングを確認しつつ、丁寧に縫合していきます
施術後および経過観察
当日の運動、飲酒は控えてください。術後7日目が抜糸の目安です。状態にもよりますが、翌日から遅くとも5日後にはシャワーが可能になります。形成外科的な手術を行った場合、縫合した創部は時間経過とともにほとんど目立たなくなります。
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手術から約1週間経過した状態で、抜糸の目安となります
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抜糸後は、しばらく赤みが残りますが、創部はしっかりくっついています
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赤みは3カ月程度残ることがありますが、次第に薄くなり徐々に周囲の色と同化していきます
平日:18:00以降、土曜:12:00以降、日曜・祝日:終日の診療では下記の追加料金が発生いたします。
3割負担の場合 | 1割負担の場合 |
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150円 | 50円 |
3割負担の場合 | 1割負担の場合 | |
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先天性耳垂裂 | 31,010円程度 | 10,500円程度 |
ピアスによる耳垂裂・耳切れは保険適用外のため、一カ所50,000円になります
※お支払いは現金のみとなります。
ピアスが原因の一般的な手術で、片耳30分~1時間程度です。形成外科的な術式を用いて仕上がりを綺麗に、傷あとがほとんど目立たない手術を心がけています。
手術中の痛みは局所麻酔を行うため、ほとんど感じません。当院では局所麻酔注入時の痛みにも極細針の採用や薬剤の工夫などで、きめ細かく対応しています。麻酔注入の際、ほんの少し痛みを感じる程度です。
術後の痛みは手術当日~翌日(約24時間)は多少ありますが、鎮痛剤にて痛みをコントロールしますので心配はありません。翌日以降、痛みは徐々におさまります。
また、手術後7~14日後に抜糸を行いますが、髪の毛より細い糸で縫っているため、ほとんど痛みを感じることはありません。
手術後の腫れは約1週間程度続き、その後、落ち着いてきます。1~2週間程度は、むくみなどの違和感が気になることもあります。傷あとの赤みが3カ月程度残ることもありますが、これは創傷の治癒反応であり、ピークを過ぎれば徐々に周囲の色と同化して、ほとんど目立たなくなります。
耳垂裂手術で合併症が起こる可能性は極めて低く、まれですが、万が一、以下のような症状が現われた場合は、速やかに対応いたしますので再度、受診してください。
露出している吸収糸を取り除きます
発熱や傷の痛み、腫れがなかなか引かない場合、非常にまれですが、傷がウイルスや細菌などに感染している可能性があります。抗生物質による薬物治療や、膿がたまっている場合には、小切開をして排膿したり、感染源を摘出したりすることもあります。
ケロイド体質の方は、傷あとがケロイド状(赤みと盛り上がりが、周辺にしみ出す状態)になることがあります。この場合、圧迫療法や内服薬による治療、局所注射などを行います。
肥厚性瘢痕も傷あとが赤く腫れ盛り上がる状態のことですが、ケロイドとは異なるものです。この場合、圧迫療法、内服薬や局所注射、軟膏剤などにより治療を行います。
皮下に血のかたまりである血種が生じた場合、必要に応じて除去します。