脂肪腫の治療
脂肪腫の治療
脂肪腫は自然になくなることはありません。また、内服薬や外用薬などで治癒することはなく、内容物が液状体ではないため、注射器の吸引によって取り出すこともできません。そのため外科手術による摘出が唯一の治療法になります。部分的に腫瘍が体内に残ると再発のリスクが高まるため、薄い膜に包まれた脂肪腫を、一塊で膜ごとすべて取り除きます。
脂肪腫は良性の腫瘍で時間の経過とともにゆっくりと拡大していきますが、大きいサイズの脂肪腫や急速に大きくなるものの中には、まれに悪性の腫瘍が存在します。そのため、必要に応じて切除後に病理組織検査で悪性所見の有無などを確認します。
腫瘍直上の皮膚を切開し、被膜を破らないように慎重に周囲組織からの剥離を進め、一塊に摘出します。摘出後は、血腫を予防するため十分に止血し、縫合を行います。最後に圧迫固定をして終了です。場合によっては切除したスペースに血液が溜まらないように、ドレーンという柔らかいストロー様の管を創部に留置します。
再発率は低く、傷口を可能な限り細かく縫合することで傷痕を目立ちにくくします。
ホームページから予約をとっていただき、来院時に超音波(エコー)検査を行います。
ほとんどの症例で触診と超音波検査で診断は可能ですが、大きい腫瘍の場合、まれに診断がつかないことがあります。その場合は、他院にてCT検査やMRI検査を行っていただくことがあります。当院で診断がつけば当日手術も可能ですが、診断がつかないケースでは他院での検査後に再度ご来院いただき、手術を行います。
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治療対象部位へのマーキング
目視で肩に大きな脂肪腫(リポーマ)があることが認識できます。手術前にペンで該当箇所と切開ラインをマーキングします。
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麻酔注射と最小限の切開
局所麻酔を注射し、脂肪腫直上の皮膚を切開します(切開の長さは摘出する腫瘍の3分の2程度が目安です)。注射が苦手な方のために、極細の針や使用する薬剤を工夫することで痛みの軽減を図っています。当院では形成外科専門医が皮膚切開部のデザインを行い、できるだけ小さい切開で傷あとが目立ちにくくなるようにこだわっています。
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丁寧な剥離と腫瘍の摘出
脂肪腫を包む薄い膜を見つけ、指先(用手剥離)とピンセットを用いて丁寧に剥離し、一塊で膜ごと摘出します。
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十分な止血と縫合
脂肪腫を摘出した部分は空洞となり血液が溜まりやすくなります。そのためしっかり止血をしてから、切開部を縫い合わせます。「ドレーン」と呼ばれる管を用いて、溜った血液を排出することもあります。その後、ガーゼと伸縮テープによって圧迫固定を行い終了です。
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抜糸
1~2週間後に抜糸を行います。縫い合わせ箇所が露出しないようにする縫合方法もあります。術後の切開部の治りを早めるとともに、傷あとを目立ちにくくするため、細い糸を用いて的確かつ丁寧に縫い合わせることを心がけています。
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創部の皮膚の再生
抜糸から1週間程度経過すると赤みが引いて、皮膚が正常な状態に再生していきます。
Point1
できるだけ小さい切開で腫瘍を摘出
Point2
局所麻酔に極細針を用いることで痛みを軽減
極細針の使用のほか、麻酔薬の工夫も行っています。局所麻酔薬には1%もしくは0.5%のエピネフリンを配合したキシロカインを用いますが、これは酸性(pH3.5~5)に偏っています。注入する薬剤は中性に近いほど痛みが軽減できますので、当院では7%メイロンを混ぜ合わせることで中性(pH7)に近づけています。これにより麻酔注入時の痛みを軽減しています。